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[2007年 3月 26日]
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能登半島地震:未知の断層で発生

 マグニチュード(M)6.9の地震が25日発生した能登半島沖は近年、死者を出すような大地震が観測されていない地域だった。しかも、未知の断層 が震源だったため、発生場所の事前予測が立てにくかった。95年の阪神大震災以降、地震の活動期に入ったとされる日本。周辺にはプレート(岩板)が集ま り、今回のような地震はいつ、どこで起きても不思議ではない。いかに地震に備えるか。北陸電力志賀(しか)原子力発電所近くで発生した今回の地震は、「原 発震災」に対する警鐘にもなった。【河内敏康、須田桃子、田中泰義】

 ◇列島、活動期に プレートの「ひずみ」が直撃

 今回の地震が発生したメカニズムは、この地域を震源とする典型的なタイプとみる専門家が多い。しかし、これまで知られていなかった断層で発生し、しかも、過去にこの地域で起きた地震の中で最大級の規模だった。地震予測の難しさを改めて示したといえそうだ。

 日本列島は、地球表面を覆うプレート(岩板)の境界が集まった場所にある。地下深部へ沈み込む太平洋側のプレートに押され、常に東西方向に圧縮されている。圧縮のひずみが極限に達すると、大陸側のプレート内部に出来た傷(断層)の比較的弱い部分がずれ地震が起こる。

 これが日本海側で起こる地震の典型だ。同様の地震は日本のどこでも起こりうるが、太平洋側では、沈み込むプレートに直接関係した地震が起こりやすく、日本海側よりも地震が多い。

 阿部勝征・東京大教授(地震学)は「日本海沿岸は太平洋側に比べ、大地震が起こる確率は低い。だが、プレート内部の傷がどこにあるかは事前に予測できず、起きてみなければ分からない」と指摘する。

 今回の震源付近では、1892年にM6.4、1933年にM6.0の地震が起きたが、いずれも今回の地震を起こした断層とは無関係だった。いずれも、死傷者や家屋の倒壊などの被害を出していた。

  能登半島では、ごく小さな断層は数多く見つかっている。しかし、震源付近では、今回のように規模の大きな地震を引き起こすような連続した断層は知られてい ない。島崎邦彦・同大教授(同)は「この種の地震は、内陸部でも起こりうる。潜在的な地震の可能性を示す、自然からの警告ととらえるべきだ」と話す。

 また、1892年の地震では、2日後にごく近くでほぼ同規模の地震が起きた。地震予知連絡会会長の大竹政和・東北大名誉教授(同)は「地質学的には『つい最近』。同様の余震があるかもしれず、十分注意して欲しい」と指摘する。

  プレートの沈み込み帯で起こる大地震との関連を指摘する声もある。京都大防災研究所の梅田康弘教授(同)は「(四国付近で起こる)南海地震の発生が近づい ていて、阪神大震災以降、西日本は地震の活動期に入っている。今回の地震もその一環で、内陸部の大都市下でも、いつ大地震が起きても不思議ではない。きち んとした備えが必要だ」と語る。

  ◇古い建物 被害集中 小刻み地震動、局地的に

 今回の地震では、現在の耐震基準を満たしていないとみられる古い住宅や寺院のほか、ブロック塀、石の灯ろうなど、小規模な構造物に被害が目立った。また、震源が浅く、被害の範囲は局地的だった。

 地震の揺れに詳しい入倉孝次郎・京都大名誉教授(強震動地震学)は「震源が浅く、小刻みに素早く動く周期1秒程度の短周期地震動が強く出たため、古い建物や小規模構造物に被害が集中したのだろう」と説明する。

  短周期地震動が顕著だったことについて、地震予知連絡会会長の大竹政和・東北大名誉教授(地震学)は「世界的にもプレート内部で起きる地震は、急激に断層 がずれるため、短周期地震動が強く表れることが多い」と話す。周期1秒程度の短周期地震動が強く表れる点で、阪神大震災(M7.3)の揺れに近いタイプと いう。

 ◇逆断層 長さ21キロ、幅14キロ

 気象庁は今回の地震について「横ずれを伴った逆断層型の地震」と分析した。国 土地理院(茨城県つくば市)も、地殻変動の観測から、断層面の向きはほぼ北東−南西方向で長さ約21キロ、幅約14キロ。北西から南東に傾き下がる右横ず れを伴う逆断層と推定。南東側の地塊が北西側に乗り上げるように約1.4メートルずれたとみている。震源が海底下にあり、海底面が上下に揺すられたために 津波も起きた。【石塚孝志】

毎日新聞 2007年3月26日 0時46分 (最終更新時間 3月26日 11時07分)

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