NHKのドラマ「東京が戦場になった日」は、これまで日の当たらなかった少年消防士たちの決死の消火活動と気概に焦点をあて、あわせて東京大空襲をリアルに再現することで戦争の恐ろしさ、非情さを浮き彫りにし、深い感銘を与えました。
ただ見終わって感じるのは、あの戦争のもとで、首都が受けた傷を描くことで日本の戦争責任がある意味曖昧にされてしまうのではないかという、一種言いようのない歯切れの悪さです。
確かにこのドラマの基底にあるのは大空襲の無残さを通したあの戦争の無意味さへの問いかけです。過酷な状況の中でも命がけで人々のいのちや財産を守ろうとした消防士たちがいたという事実の重みでしたでしょう。これはあの3.11での消防士たちの命をかけたたたかいに通じるものがあります。
だが、「助けて、この子だけでも」という母子が炎に呑まれていったとき、「チクショウ」と叫んだ主人公の、この叫びはいったい誰に向けられていたのか。自分の無力さか、米軍の非情さなのか・・・。それともやり場のない怒り、悲しみなのか・・・
昨日本当に久しぶりに図書館でずっと探していた本=「大東亜戦争の本質」(同台経済懇話会 紀伊國屋書店)をみつけ借りてきました。これは以前借りて読もうとしたのですが、最後まで読めないまま放置していたのです。
この本の第1章は「大東亜戦争の世界史的意義」と題し、その巻頭には瀬島龍三氏の「大東亜戦争の歴史的考察」という小論が載せられています。
私はこの本が、現在注目を浴びる「歴史改竄派」の源流としての位置を占め、その理論的根拠を与えているとみて徹底して批判しなければならないとずっと思ってきたのですが、結局いままで果たせないままでいました。
改めてこの本の瀬島氏の論考を見てみると、今日安倍政権や靖国派の面々が主張する内容を網羅し、その肉付けを与えていることに驚きます。
瀬島氏は小論の冒頭次のように書きます。
戦争というものは、多数の側面を持つ多面的・複雑な現象であり、また双務的なものである。従って大東亜戦争の原因も本質も、当然多くの側面があり、一方的なものではない。・・・(3ページ)
私には、アジアに於ける日本の進出が帝国主義的植民地政策から出た者であるとは思えない。当時の日本の政治情勢から見て、それほどの明確な意図も、ノウハウも、能力もなかったということが出来るだろう。・・・日本に領土的野心がなかったことは、その間のあらゆる外交交渉や政治上の文書からみても明らかである。ここに彼の立脚点がきわめて明瞭に主張されています。あの戦争の原因・本質をすべて相対化する中で日本の戦争犯罪を相対化し、あくまで米英によって余儀なくされた戦争であり、「侵略」性などなかったと結論づけるあの構図です。
私は瀬島さん個人が帝国主義的野望に燃えていたとか、領土的野心たぎらせていたなどとは毛頭考えてはいません。しかし、大本営作戦参謀として客観的に果たした役割はまさしくそれでしょう。
つまり、NHKがあの戦争を描く場合にも、そうした「相対主義」が見え隠れしないかということを言いたいのです。
かつて私が書いたように、あの戦争でのアメリカの無差別爆撃や原爆投下は明白な戦争犯罪です。ただ勝者の論理で裁かれなかっただけなのです。それを常に問いかけていくことと、日本がアジア各国にもたらした戦争犯罪とを一緒くたにして、帳消しにしてしまうような議論には与することはできません。関連を持ちながら別個の問題として深く掘り下げていく必要があると思うのです。
昨日日本共産党の志位委員長が「歴史の偽造は許されない=「『河野談話』と日本軍『慰安婦』問題の本質と題してきわめて重要な
見解を発表しました。
この発表には、11か国13人の大使館関係者や学者・研究者、メディア8社代表、その他多数の人たちが参加、注目の高さを示しています。これは今日の「しんぶん赤旗」でも
詳細に報道されています。
これまで国内でさまざまに「ねつ造、修正」が画策されてきた「戦時制奴隷」(従軍「慰安婦」)問題の総決算であり、批判の集大成とも言うべき内容と論理をもった見解として、もっともっと注目されていい。
一読して、日本の政党の中でただ一つ、毅然として具体的にかつ詳細にこの問題を正面切ってとりあげ批判し尽くしていることに深い感銘を覚えます。
そして同時に、最近の籾井会長や百田委員の発言、「河野談話は継承するが、検証する」という菅官房長官の発言を聞くにつけ、日本の深部に潜む深い深い闇と黒い意図を感じざるを得ません。
庶民レベルでどこまでこうした問題に切り込み、決着をつけるのか、これから長い長いたたかいを続けなければならないでしょう。ただし、志位委員長が言うように「歴史改竄派に未来はない」ということだけははっきりしています。
********************************さて、好天に恵まれた今日の午前、バラ園での今年最初のイベント「選定作業」に10数人がとりくみました。
今年は一般募集を行わず、会員だけの作業としたために、作業は結構スムーズに運びました。
幸い南斜面なので雪の被害も少なく、6月初旬のバラ祭りできれいな花をたくさん咲かせてくれることを願って、一本一本丁寧に選定を行いました。
途中、野バラの根を持ってきてくれたEさんを囲んで、即席の「接ぎ木」講習会を行いました。
「アンネのバラ」はどんどん接ぎ木で増やして配布できますから、これから会でも力をつけてたくさん普及できるようにしたいもの。
選定のあとは恒例のおしゃべり会。大糸タイムスも取材に来てくれました。