金融庁、金融審議会の報告書「高齢社会における資産形成・管理」をめぐる政府・自民党の狼狽ぶりが極限に。
麻生さん、何を言っているのかさっぱりわからない。ろくに報告書を読んでもいないのに、「世間に著しい不安と誤解を与えており、これまでの政府の政策スタンスとも異なっているので、正式な報告書として受け取らない」だって。
「公的年金は、老後の生活をある程度賄うことができるようにするのが政策スタンス」ともおっしゃる。あ、あれから急いで読んだのかな?でも、現在の公的年金で老後の生活を「ある程度」まかなうことができるって、5万円不足しないってこと?それとも5万円不足しないように一層切り詰めて生活しろってことかな?
自民党は、「金融庁に対し、老後資金として2000万円が必要とした金融庁金融審議会の報告書への抗議を伝え、撤回を要求した」そうな。二階幹事長はその真意を「参院選を控えており、党として候補者に迷惑を掛けないよう注意していかねばならない」と語っているのですから、率直と言えばいいのか、アホ丸出しといえばいいのか。
今朝の朝日系列TVのニュース番組でもこの問題は大きく取り上げられており、コメンテーターの青木理さんは麻生さんが「冒頭の一部、目を通した。全体を読んでいるわけではない」と平然と国会で答えたことなどに関連し「国民をなめている」と呆れ顔。
報告書は、厚労省の家計収入、支出の統計から毎月の赤字額が約5万円になっていることをあげ、これが「毎月発生する場合には20年で約1300万円、30年で約2000万円の取り崩し(各自の金融資産から)が必要になる」と書いており、これが大きく取り上げられているということなのでしょう。
しかし、ですね。この報告書って何?とそもそもをたどれば、金融庁が審議会をして「これからは自助の時代ですよ。老後に備えるなら投資などの資産運用、あんまり活用されていないようだけど、もっと勉強して資産形成に励みましょう」と言わせ、証券会社のセールスをやっているようなシロモノ。報告書は「はじめに」で、「個々人、金融サービス提供者双方の観点から計12回議論」してきたと正直に書いていますから。
公的年金は、私の世代あたりから過去ものすごい割合で引き下げられ、さらに現在年金は「
マクロ経済スライドによる調整」と称して、物価・賃金が多少上がっても年金額は上がらず、物価・賃金が下がれば連動して下げることになっています。自営業者など国保加入者はさらにひどい状態。「報告書」どころの騒ぎではありません。
要するに、現在の年金のあり方を国民本位に変える意図などさらになく、むしろもっと保険料を高く給付を低くしておいて、このままじゃやっていけないから、若いときから「保有する資産を活用した資産形成・運用といった『自助』の充実を行っていく必要がある」というわけです。
厚労省のデータをもとに議論している報告書を「政府の政策スタンスと異なる」というのは一体どういう了見ですかね。じゃ、どういう報告書を期待していたのでしょう。おそらく、審議委員は「やってられない」と思ったんじゃないでしょうかね。資産運用をどんどんやってもらってもうけをあげようともくろんでいた証券会社などの方々は、「せっかくの報告書をどうしてくれるんだ」と怒りをぶちまけているのかも。
そもそも、公的年金を充実するための財源問題に切り込むわけでも、問題点をきちんと指摘するわけでもなく、年金制度の改革については完全にネグレクトし、政府の政策に則って将来を見ればこうなるという頭の持ち主でしかありませんから、政策的な文書では全くありません。
私からみれば、こんな報告書など有害無益。イージスアショアをやめ、F35の爆買いを中止し、その他アメリカからの兵器購入をやめることが先。税制の仕組みを根本から見直してみれば、ずいぶんと財源がでてくるのでは?こんな議論はタブーとされ、自助努力のみが強調され、挙げ句の果てはわずかな蓄えさえ金融・証券業界にまるまる吸い取られていくんじゃたまったもんじゃないですねえ。
最後に、言わずもがなですけれど、私は政府の審議会が国民的なレベルで自助を強調し資産運用を奨励していることを問題にしているのであって、投資についてよく研究し、リスク管理を徹底して資産運用している個々人を問題視しているわけでは全くありません。