NHKの国際報道を見ていると、ヨーロッパ各国はイスラエルのガザからの撤退をめぐって停戦合意が成立し第一段階が発効したことを大きく報道。
ガザでは喜びの声があふれていることや、イスラエルでも人質が解放されることへの喜びが伝えられているものの、あるメディアは、パレスチナ人4万人以上が犠牲になっていることから、ガザ住民すべてにイスラエルへの「ぬきがたい恨みの感情」が渦巻いていることを報じていました。
イスラエル国内では、この停戦に反対し民族浄化を唱える極右の勢力が依然として根強く存在していることから、この停戦合意が最後まで実現するのかどうかは予断を許さない。
停戦合意ができたのはトランプの圧力があったからだとする報道も見られ、トランプ自身もそのように発言していましたが、これは全くの茶番。イスラエルに武器を供給し続けながら、もう一方で停戦に尽力したなどという物言いが国際的に通用するわけがない。
いずれにせよ、この停戦が完全な戦闘終結とパレスチナの復興に結びつけ、パレスチナの自決権と国家の承認へとつなげる国際的な努力が不可欠なのです。
ガザの問題にしろ、ウクライナへのロシアの軍事侵略にしろ、大局的な立場に立って、紛争を仲介し解決に導く意思のある国が存在しない。どの国も自国の利益が優先し、そのために国連も全く機能不全に陥っている。日本はあいかわらずアメリカの僕で、国際的には何の役割も果たし得ない情けない状況ですから、大国の狭間にあって苦しむ国の人々にとっては、さらに受難の時代が続くことになるのでしょう。
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その一方で、アメリカ・ロスの森林火災で明らかになったように、気候危機は新たな局面に入ったと思われます。
イギリスの国際NGO「オックスファムGB」が「世界の最も裕福な1%の人々が、1月に入ってわずか10日間で、すでに今年の世界の炭素予算の公平な割り当て分を使い果たしている」という報告書を出しました。(詳しくは「Share the world's Resources」)
報告書では、イギリス政府に対して、富裕層への迎合をやめ、環境への代償を支払わせるべきだと求めており、こうした課税政策に対しては、イギリス国民の81%が賛成しているとも。下は、これを報じるしんぶん赤旗の記事。
環境系ビジネス情報誌alternaによれば、オックスファムは2024年10月に、「『炭素の不平等』に関する最新報告書」を出し、やはり世界の上位1%がどれほど地球環境への悪影響を与えているかを告発したことを紹介していました。
この報告書では、「世界の上位1%の富裕層によるCO2排出量は、グローバルサウスの貧しい国々に住む50億人の排出量に匹敵」「大量のCO2排出が生産高を減少させ、飢餓や貧困につながった」と指摘しています。
また、イーロンマスク氏やジェフ・ベゾス氏のプライベイト。ジェットがどれほどのCO2を出しているかを具体的に指摘するとともに、富裕層の保有株式の4割が「石油、鉱業、海運、セメントなどの多排出産業に集中している」ことを明らかにし、富裕層に対する課税の強化、プライベートジェット機や豪華ヨットの使用制限などを求めているのです。
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人類滅亡までの残り時間を示す「終末時計」(米科学誌「原子力科学者会報(BAS)」が毎年発表)は過去最短の「90秒」。
過去には核戦争の脅威が中心だったが、2007年以降は「人工知能(AI)や気候変動、核戦争といった人為的なリスクも考慮に入れられている」。
誰が本気でこの状況を変えていくことができるのか。
当然ながら、根本的に変えられるのは政治の力であり、それを実現する政治勢力およびそれを支える民衆の力ということになります。
この国で、どうやってそれを作り上げていくのか。
そもそも、現在の状況がどれほど人々の認識になっているのか。今年はそのことが問われる正念場になるでしょう。