池田町の議会基本条例が制定されたのは2013(H25)年10月1日。それから12年が経ちます。
議会では、現在の情勢に合わせて、議会基本条例の見直しが進められてきました。
町のホームページでは、条例の一部改正案が発表され、6月定例会に向けて町民からの
意見募集(締め切り5月15日)が始まっています。
改正案の内容や
政策サポーター要綱については、議会のウエブサイトからダウンロードできます。
「見直しの要点」によると、改正の主な趣旨は次のようなものです。
①少子高齢化、人口減少という時代の変化に即応した議会活動をすすめるため「町民・議会・行政の協働による町づくり」の観点を明確にし、町民に開かれた議会活動をすすめ、議会の政策立案能力の向上など議会の機能強化をはかる。
②上記の観点をすすめるために、(a)委員会代表の一般質問を可能にする、(b)町民による町議会政策サポーターをおく、(c)議会活動が条例に沿っているかどうかを検証する、(d)災害時の議会対応策を加える、などの具体策を追加する。
条例の改正そのものについては、積極的で今日的な意味のあるものになっていると肯定的に評価します。それぞれの議員が、この条例を意識して活動できるようになれば、町民にとっても意義あることだろうと思います。
確かに議会活動の拠って立つ理念なり方針なりを定めることは、大きな意義を持つとはいえ、それで事足りるわけではありません。
この10年余の議会活動を見るにつけても、いくつかの問題点を指摘しないわけにはいきません。
1.議会は行政のチェック役が大きな仕事であることをどれだけ内実化しているか。
①昨年度、政府は物価高等の対策として地方自治体への交付金を出しました。お隣の松川村は、年度中に臨時議会を開いて事業計画(独自財源を加えて一人1万円支給)を決め即時実施しました。しかし、池田町は今年度に持ち越したうえに、4月中にプレミアム商品券などを発行を町長の専決処分で決めるとしたのです。
本来、政府からの交付金による町の事業実施については、議会を開き予算議決すべきものであり、行政運営の本筋からズレています。
議会は、こうした町の不自然な行政運営に大して、昨年度であれば、直ちに臨時議会を開くべきであると申し入れるとか、やむなく今年度に持ち越すとしても年度当初に臨時議会を開くとかの申し入れを行い、行政の不正常さを正すべきです。
②昨年度の秋からの予算編成において、本来であれば町長は早期に予算編成方針を出し各課の予算要求の指針とすべきであり、しかるべき時に町民にも説明し、予算編成の基本的な柱、重点を示すべきです。
ところが、出された方針らしきものはとても「方針」とはいえず、重点項目はこれこれだと説明があったのは、ほぼ予算編成が終わってからでした。
議会としては、時機を失せずに予算編成方針を議会に示し、説明すべきであると申し入れるべきですが、その形跡はありません。
何か行政側の方針に大きな問題が生じてから、それに対応する、チェックするというのも当然必要でしょうが、行政運営の土台となる方針について、時機を失せずに対応するのも議会の重要な役目ではないのでしょうか。
2.「町民の声」を聞き「町民に開かれた議会」をどのように具体化するのか。
一昨年末に新農業法人設立にあたって、過半数の議員が農振協会長と前町長の方針に従って、直ぐにでも設立し事業を開始しなければ大変なことになるという切迫感を訴えて、町の出資に賛成しました。
しかし、当の多くの農業者からは、急いで法人化すべきではなく、池田町全体の農業振興策については町内の農業者の意見をよく聞いて進める必要があるとの意見が出され、町や議会への要望も行われました。
その後の推移は、新法人には高齢の代表者が1名いるだけで、あとは実働部隊はおらず、1年間何もしないまま推移。現在に至っても、何をどのように進めるのかさえほとんど決まっていないのが実情です。
出資者による会議は1,2回開かれているようですが、新法人の組織としての運営は全く聞こえてきません。
責任の主な所在は前町長にあることは事実ですが、議会としても町民に開かれ、意見を聞くというのであれば、既存の法人等で日々努力している農業者からの意見に耳を傾けるべきであり、条例の精神からはズレていると感じざるを得ません。
3.政策提言を重視し、そのために政策サポーターを新設するとしているが、議員の政策立案能力をどう高めるのか。
「政策提言」と一言で言っても、その内容は多岐にわたります。また、福祉なら福祉、教育なら教育についての幅広い知識と見識が問われます。
今から10数年前、私を含む何人かが共同で財政白書を初めて作り公表したときに、議会の何名かの有志が私に財政についての説明を求め白書の内容を解説したことがありました。
それから何度かの改定版の発行を経て、2021年をもって白書の作成は終了しましたけれど、本来なら行政と議会が共同で、こうした町の財政事情について常に研究し必要なデータを町民に知らせることが求められます。
政策の土台になるのは財政ですから、財政に強い議会になってほしいものだと常々思ってきました。しかし、現実にはなかなかそこまでには至らない。
そうした議会の実情のままで政策サポーターを制度化しても、果たして有効な対策になり得るのか、一抹の不安があります。
その前に、議会として、分野別に政策研究チームを立ち上げ、深く検討を開始すべきではないのでしょうか。
とくに、今回の改訂の問題意識として、町の人口減少をあげていますけれど、果たして実態はどうであり、どこに問題があるのかの共通理解が得られているのか。どれだけ議会としてデータを蓄積し、実証的に検討を深めているのか、そうした点が問われているのです。
今回の改訂を機に、これまでの議会活動を総点検し、町民とともに進む議会を実現してほしいものです。