今日は涼しくて秋らしいお天気。池田八幡宮のお祭りもにぎわったことでしょう。
午後から庭先を整理して秋野菜の種まき。1ヶ月以上もかかって、草取りをしたり、終わったものから少しずつ片付けながら、ようやく次のステップに進むことができました。ところが種を植えたところもお構いなしに、猫のハルちゃんが蹴散らして横断。こればかりはオレの領土だから入るなとも言えず、話し合いで解決するわけにもいかず、さりとて防護柵をつくることもできず、何とも歯がゆいことです。
野菜が大きくなれば、通らなくなるのでそれまでのガマン。
最近の政治の状況は本当に腹立たしいことばかり。中でも尖閣諸島をめぐる日中の問題とオスプレイの配備問題、原発問題は政治の貧困を際だたせている重大問題です。もちろんそのほかにも、自民党の党首選や橋下維新の会問題など、触れたくもないようなものもありますけれど、私にはこれらのすべてが同じ根っこから生えているいくつかの種類の「毒キノコ」みたいに思えて仕方がありません。
まず尖閣諸島をめぐる問題です。中国国内での「反日デモ」の異常さは目を覆うばかりでしたね。「愛国無罪」などという近代国家ではあり得ない無法ぶりは、とても「法治国家」とはいえない遅れた中国の一面を国際的に晒してしまいました。
公安当局が国民にデモをするなというメールを送ること自体、表現の自由がないことを示しているわけだし、そうでもしなければ統制がとれない治安の弱さを露呈しているともいえます。ただ、このデモの背景には恐るべき貧富、労働態様の格差が隠れているわけだし、また、何万というデモもある意味では当局によって泳がされた(「やらせ」だとは思いません)、一部の跳ね上がり的な行動ともいえるわけで、中国全土がこうした理性を欠いた雰囲気で一色に塗りつぶされているわけではありません。
そしてまた、日本軍国主義による中国侵略の記憶が、いまや強大になった自国の政治・経済力と結んで折に触れて吹き出してくるともいえます。これは今日の大方の「日本人」には決して理解できないから余計に始末が悪い。
国内では、民主党政権が「領土問題は存在しない」の一点張り。9月9日ウラジオストックでの胡錦涛主席との非公式で「国有化しないでほしい」という要請があったその次の日にはそんなことにはおかまいなしに尖閣諸島の国有化に踏み切るという外交音痴ぶりなのです。
中国からすれば「領土問題は存在しない」という立場は全く同じではありませんか。だとすれば、野田政権の(無いに等しい)「外交」方針では、その行く末は武力的な解決しかないことになるでしょう。要するに力が強い方が領土を獲得する。
ネット上では、政府の「弱腰外交」を非難攻撃する右からの突き上げが勢いづき、週刊誌なども中国がいかに無法ぶりを発揮しているかを書き散らし、果ては中国全土で「日本人を皆殺しにせよ」という雰囲気が醸成されているかのようにかき立てている。
ところが、です。メディアも政府も尖閣をめぐる日中の歴史的な推移については全く触れようとしない。触れれば領土問題があるかのように受け取られるからだという論理。また、40年前の日中国交正常化時から2度も日本政府は尖閣問題で「棚上げ」に合意したという歴史的事実があります。これも一部では中国側の一方的な発言だとして、当時の自民党政権を免罪する動きすらある。
今日はネットで放映された「ニコニコ動画」での「まるごと紹介! 一気に見せます共産党!」という5時間もある
録画番組を妻と二人で結構な時間みておりました。
準備不足の感が無きにしも非ずでしたが、その中での圧巻はなんと言っても志井委員長の尖閣問題についての日本共産党の見解です。聞き手は政治ジャーナリストの角谷浩一さん。
是非ご覧になることをおすすめしますよ。おもしろかったのは角谷さんの発言。「共産党というのは硬直的な主張しかしないと思っていたら一番柔軟でスジが通っていて、外交に当たっている政権党がもっとも硬直している」「日本の外交は共産党に任せたらどうですか」というところ。
共産党の見解はホームページでも読めますからここでは書きませんが、角谷さんも言っていたとおり「一番スジが通って」いるし、理性的な対処方針であることは間違いありません。
ちなみにこの番組、ライブで10万人が視聴し、私のように後からみる人も含めれば10数万人が見ていることになる。これはすごいですね。角谷さん流に言えば、「おまわりさん」もかなり見ているのでは・・・ということになりますが。
これに対して、現在党首選挙をやっている自民党はどうでしょう。誰が一番「勇ましい」態度を表明するか、いかにアメリカと同盟を強化し日本の軍事力を高めて中国と対決するかという話ばかり。集団的自衛権などは当たり前で、中国が尖閣を実効支配しようと軍事力を背景に「攻めて」くれば、日米安保を発動して日米両軍が中国軍と一戦交えることも辞さないというような背筋が寒くなるようなお話ばっかりです。
週刊誌などもあおり立てるシナリオに溜飲を下げる向きもあるのかもしれませんけれど、日中双方の紛争をもしどちらかが「武力」で解決しようとすれば、それは
日中平和友好条約(第1条)の破棄を意味するわけですから、一気に戦争状態に突入ということになります。
日本国憲法第9条をなくして、軍隊を正式に持ち集団的自衛権を発動できる国へと変質させようというのが自民党の究極のねらいですから、尖閣問題は千載一遇のチャンスなのでしょう。
総裁候補の面々が喜々として強い日本を語りたがる彼らの血には紛れもなく戦前からの「皇国日本」「神国日本」のDNAが刻まれている。
数日前から私はある本を読んでおりました。元外務相・国際情報局長、元外国大使、元防衛大学校教授の孫崎亨(まごさきうける)さんの「戦後史の正体」と「日本の国境問題ー尖閣・竹島・北方領土」の2冊です。石原慎太郎の著書などと並んで本屋におかれていたので、いかがわしいものかと思っていましたら、まるで正反対。外交に精通している人だけあって、書かれていることは実証的だし、政治の裏側が緻密に描かれていて実におもしろく興味深い本でした。
前者の本の問題意識は、日本の外交が「外交」といえるものではなく、なぜこれほどアメリカの言うがままなのかを歴史的に解明しようとした意欲的なもの。私の問題意識にもかなり沿い、解明してくれている貴重な本です。
著者自身次のように書いています。
「なぜ日本はこうも米国の圧力に弱いのだろう」
この問いは、私の外務省時代を通じて、つねにつきまとった疑問でもありました。<中略>
大きな歴史の流れを描くことを、もし誰かがやらなければならないとすれば、勇気をもって行うべきはおそらく外務省のOBでしょう。学者やジャーナリストの人たちは、世間で「陰謀論」といわれるような国際政治の闇の部分にふれることがほとんどないからです。後者の「日本の国境問題」では、尖閣問題の基本的な対応として、日中双方の「棚上げ」という解決策はきわめて現実的で唯一の方法であると主張しています。自民党政権も、現民主党政権もこのことを忘れて硬直した態度に終始しているところに今日の深刻さの根源があるという見方です。
日中双方の、尖閣をめぐる歴史的な経過についてもくわしく解明、日本共産党の見解もきちんと紹介しているのです。ただ、著者は、以下に述べる諸点で共産党の見解よりも中国の主張の方に分があるという立場です。
第1は、「先占」という概念は、根本的には植民地獲得の原理として国際的に現れたもので、「19世紀以前には漠としてであっても中国の管轄圏内に入っていた尖閣諸島に対して『これは”無主の地”を領有する”先占”にあたる』の論理がどこまで説得力があるか疑問である」
第2は、尖閣が日清戦争で日本が清国から奪った島に入るのかどうかという問題。外務省も共産党も、尖閣はいずれにも含まれないという立場ですが、中国は逆に琉球の範囲を歴史づけることで、一貫して台湾の一部であると主張していることを紹介しています。
そして第3は、日本の「先占」に対して、共産党の言うように「中国からの異議や反論がなかった」という主張に対する中国側からの詳細な反論の紹介です。
「この立場をとれば、『中国は1895年から1970年までの75年間、一度も日本の領有に意義も反論もおこなっていない事実がある』との『赤旗』紙の指摘は必ずしも正確ではない」「必ずしも」というのは、尖閣諸島が台湾に属しているという主張が正しければという条件付きですから、それが崩れれば、「赤旗」紙の主張に道理があるということになります。いずれにせよ、共産党の見解は無視できないし、十分に吟味すべきだという誠実さが印象的です。
こうした相違点があるにせよ、共産党もこの本の著者も「日中双方に領有権の問題がある」という認識に立つべきだという点では一致しています。そのうえで、孫崎さんは「中国は10年後日本より強い海軍力を持つ、これを考慮に入れて対応すべき」だということと、「中国には一方に軍事力で奪取せんとするグループがいる。一方では尖閣諸島では紛争を避けたいというグループがいる。日本は中国の後者といかに互いに理解し協力関係を強化するかが重要」であると指摘しているのです。
では、一端武力による衝突が避けられないとなったら、米軍が中国軍を一蹴するのか。こうした方向へ誘導したいサンケイや一部週刊誌の報道に関して、次のように書きます。
尖閣諸島では中国が攻めてきた時には自衛隊が守る。この際には米軍はでない。ここで自衛隊が守れば問題ない。しかし守りきれなければ、管轄値は中国に渡る。その時にはもう安保条約の対象ではなくなる。
こう見ると、「日本は北方領土、竹島、尖閣列島を守るためにも、強固な日米関係が必要である」と一般に思われていることが、実はどれもこれも自明ではない。
米国は、日中間の緊張が日本の米国戦略との一体化に貢献するなら、日本に厳しく対処しろという。しかし、日中の武力紛争で米国が巻き込まれる可能性が出れば、米国は身を引く。
これが米国安全保障分野で主流を占めるリアリストたちの考え方である。そして本の終わりでは、どうしたら平和的に解決できるのかを様々に提言しています。どの部分でも、対米追随ではなく日本外交でスジを通したい元外務官僚の気骨が伝わってきます。
この国の不幸は、今日の選挙制度のもとで、最悪の対米従属外交の政党が支配を続けているということ。財界自体がその体質でまみれているわけですから、孫崎さんの嘆きも身にしみてわかります。
だとすれば、日本国憲法の価値に立脚する国民のたたかいをさらに強める以外にない。あの戦争から何を学んだのか、何故にいまだに「国体」意識を持った連中を許しているのか、どうすれば地域から真に民主主義の社会を作り出せるのか。これから半年も待たずに日本の将来を決定的づける分岐点に到達するという気がします。