辺野古大浦湾では相変わらず海保の暴力的排除が続いています。また、陸上では国道を封鎖して重機を運び込むために警察が大勢動員され(写真下1:沖縄タイムス)、抗議する住民を排除。国家権力ぐるみで辺野古への新基地建設を強行しようしています。
昨日の
琉球新報ではカメラを持つ女性に馬乗りになる海保職員の様子(写真下2:金良孝矢撮影)や肋骨を折るケガをさせられた人も出ていることを伝えていました。
またチョイさんは、ヘリパッド建設が続く東村高江で開かれた抗議集会に参加、参加者が520名と過去最大規模になったと伝えていました。(いずれもチョイさんのブログより転載しました)
********************************
「これから1週間、バインダートークについて説明します」と切り出したのは、つい最近まで大手化粧品メーカーのマネージャーを務めていたという50才近くの女性。がっしりした表紙に包まれて30ページほどのカラー刷りの分厚い説明書がはさまれている。これをもとに30万円(50万円の時代も?)もする学習教材を売り込むトークの基礎知識を事前研修するのです。私が東京で仕事をすることになった会社でのことです。
いまから30年近くも前のことですからほとんどの内容は忘れてしまいましたが、それでも強烈に覚えていることがいくつかあります。
第一は、その教材の内容について知る必要はなく、全国でもトップクラスの講師陣によって書かれた優れた学習参考書であることを頭にたたき込むこと。第2は、トークの最も大事なことは「教材」を語るのではなく、親や子に「夢」を語ることだと言われたこと。
そこしか行くところがなく、拾ってもらったという思いの強かった会社でしたから、初めは心を決めて何とかうまくやろうと思って努力しておりました。
ところがその教材の内容を見ると市販のものと大差のないもので、いくら何でも高すぎるだろう。そんなことなら私が教材なしで教えた方がよほどうまくやれるはずだ・・・どうでもいいものを、「あなたはこれを使って学べば必ず進路を我が物にすることができる」などというありもしない「夢」を語るということは詐欺そのものだ・・・そう感じるのに時間はかからず、つくづく怖くなってきたのでした。
しかし、それができないと出来高払いの会社では成果がなければ給料は基本給のみの月10万円程度。生活できる水準ではありません。トップセールスをした者にはハワイ旅行が待っていますという釣り文句で否応なしに電話でアポを取らせ、教材売りに出かける。「あいつがアポを取ったらしい」と社員同士を競わせ、時間かまわず働くように駆り立てる。
世の中にはこんな悪質商法があるのだということを骨身にしみて感じました。
この売り込み戦略とは、消費者にある「我が子のためなら」「他より少しでもいいものなら」「それほど高価な物なら良いものに違いない」んどというわずかな期待感を最大限にこじ開け、そこにつけ込んで甘い言葉で夢へと誘い込むまさに情報操作、洗脳行為なのです。
なせそんなアホみたいな仕事をしていたかって?そりゃ生きるためですよ。その当時はそれしかなかった。どうしたら糊口をしのげるかそれしかなかった。こんなアコギな仕事に関わっている人はみんなそうです。それで法外な利益を得るトップの連中は別として、生きがいを感じてやっているなんて人は絶対にいません。同僚と新宿西口の飯屋で昼食を食いながらしみじみいろいろ身の上に関することを話し合ったものでした。今頃どうしているのやら。
その会社で、仕事としてまずやることは、名簿会社から購入した学校の名簿(完全にはそろっていない)をもとに電話をかけることです。その電話のかけ方も事前研修があるのですが、これは「悪い意味」で参考になりました。たとえば相手に相づちを打たせて、直後に間髪を入れずこちらから教材の良さをたたみかけ相手に答えさせない。「〜ですよね」と言って相づちを打たせて、すかさず相手が関心を示しそうな次の話題に行く。相手がそれなりに関心を示してくれればそこではじめてアポへの会話が成立するという仕組みです。
その教材購入と個別指導はセットになっていて、個別指導教室も新宿西口センタービルにあることがウリでした。しかしその個別指導はまた別の子会社が運営するので、実態は全くわからない。知らされるのは丁寧な指導をするということだけ。
こうした会話で得た情報をもとにして、名簿も次々と充実し、学校内での人間関係、担任教師や教科担当教師の評判などもすべて掌握していくのです。電話作戦と言ってもそれはそれは周到な作戦です。
気が小さい私は、強引な勧誘などできるはずもなく、つい相手の気持ちになってしまいますから電話していても絶えず「次のように話せ」というメモが飛んできましたよ。だいたいこんな仕事には向いているわけもなかったのです。
ただ、最近勧誘電話が時折わが自宅にもかかってきますが、私は「学習した」基準に照らして相手の出方を研究していますので勧誘される方ご注意ください。
ところで、私がこの会社にいたのはわずか1ヶ月。そのうち1週間は先ほどのべた「社員教育」でしたから、実質3週間の見習いで誰にも被害を与えず、おさらばしたのは実に幸いなことでした。もっとも胃に穴が開くほどの3週間でしたけど。丘につり上げられてバタバタする魚みたいなものでした。
そしてその直後にさる進学塾塾に就職が決まり、進学教室の講師稼業をすることになったのです。そこでは本当に水に戻ってきたという実感がしました。
さて、そのくだんの教材会社、それからかなり存続はしていたようですが、ついに2007年「詐欺まがいの勧誘と教材の販売が経済産業省から6ヶ月間の業務停止処分を受けた」のでした。それまでにも全国で無数の苦情相談が寄せられたり、何度も行政指導を受けたりしながら不誠実な対応に終始、結局経営破綻してしまったのでした。当然のなりゆきでしょうね。
このような営業が成り立つと考えて実行に移す大手企業があるということ、営業のノーハウを事細かに指導し、電話する場合でも横にいて指示を出し、生徒の個人情報を様々な手段で入手するマネージャがそれだけで仕事になるということ。それを専門にする人間がこの世の中にごまんといること。そうしたことを知っただけでも私には苦いけれどよい人生経験になりました。私のアホな人生経験の一コマを紹介した次第です。
非正規労働で苦しみ、いつクビを切られるか分からない職場で歯を食いしばって耐えている若者がたくさんいる。まじめに働く意思を持ちながら、そうできずにもがく人たちが無数にいる。小さな子をかかえ、ここしかないと自分に言い聞かせて自分にむち打って仕事をしている(させられている)若い母親がいる。
そんな世の中を少しでもよくするには、必ずいっしょに問題を考えてくれる仲間がいると信じてしかるべきところに相談すること、決して一人で悩まないことです。