自公維で修正に値しないようなものを共謀罪の「修正案」として出したからと17日の国会通過を狙う。法相は答弁できずに刑事局長に答えさせるばかり。「テロ対策」「オリンピックのため」などとウソにウソをぬりかため、高学歴のお歴々が国会で法案をもてあそぶ。見苦しさを通り越して、恐ろしさでいっぱいになります。
これまでも「日本型ファシズム」への道を突き進んでいるという批判はあったが、私はこの共謀罪が間違いなく警察国家、監視国家を特徴とする「現代型ファシズム日本」への引き金になると見ています。
まず何よりも、この共謀罪は現行刑法を根幹から変容させるものであること。
これまではどんなに内心で犯罪を描いていたとしてもそれは「内心の自由」であって犯罪・処罰の対象とはされなかった。つまり犯罪の実行実行後の処罰が原則だったのです。しかし、この法案が通れば二人以上の計画(=合意)だけで「犯罪」が成立する。その「計画」が処罰対象であるかどうかは捜査機関の裁量にかかっているというわけですから、それを立証するためにネット、通信、その他あらゆる個人の情報が丸裸にされることになります。乱暴に内心に踏み込んでくることは明らか。
政府・与党は、この共謀罪について、いくつものウソを重ねています。冒頭にも述べた「テロ対策」だというのがその1つ。
関連して政府が国連の「組織犯罪防止条約」を締結するための条件整備だとしている点もウソの上塗り。
この点は先日指摘しましたね。国連のTOC条約起草委員会でこの条約について「テロリズムは対象とすべきではない」としつこく主張したのが日本政府交渉団だったという「お笑い」に近いような事実がそれを端的に物語っています。東京新聞が
「共謀罪の源流」として詳しく報道しています。これは意外と知られていない。
第2は、「オリンピック」を口実にしている点。
政府は民進党議員からの
質問趣意書で、オリンピックに向けて「本条約を締結し、国際社会と協調してテロを含む組織犯罪と戦うことは重要な課題であり、テロを含む組織犯罪に対処するための万全の態勢を整えることは、開催国の当然の責務であると考えている」と、あたかも現行法では取り締まれないかのように描いています。が、これは全くのウソ。
「条約締結⇒オリンピックの開催」という図式を国民の前にぶら下げることで、共謀罪を成立させようという意図はあまりに露骨ですが、一皮むけば中身はボロボロ。
2013年のIOC総会で安倍首相自身「(東京は)二〇年を迎えても世界有数の安全な都市」と
公言して誘致に成功したことなどとっくに忘れているらしい。もっともテロとは全く別の次元で「世界一危険な都市」(地震、津波、洪水などの自然災害など)とも見做されていることは記憶しておいてもいい。
一転、オリンピックがテロを呼び込むかもしれないから共謀罪が必要なのだといいはじめたわけで、そうだとすればオリンピックとは極めて危険なイベントであり、また、国民が関係のない政治集会やデモをしてもオリンピックを妨げているとして警察がいつでも検挙できることを示すものですね。
第3は、「一般国民は対象とはならない」というウソ。
共謀罪の構成要件について、盛山法務副大臣の衆院法務委員会での答弁の変遷が面白い。
4月21日、「(通常の社会生活を送っている方々が)対象にならないことにはならないが、ボリュームとしては大変限られる」
4月28日、「通常の社会生活を送っている方々は捜査の対象にならない」。
共謀罪での処罰には「合意」に加えて「準備行為」が必要だと政府は主張する。ところが、準備行為に当たるかどうかは内心を調べる必要が必然的に生まれ、人権侵害につながることは明らかです。組織犯罪の定義がまるであいまいなのですから、どのような組織でも警察がテロ等を計画する組織犯罪と認定すれば共謀罪が成立する危険性は依然として残る。例の
「花見と下見」の違いについての金田法相の愚劣な答弁がこの法案がどれほどもものかを示しています。
277の共謀罪関連法がどのようなものか、実はあまり知られていないのではないか。テロに関係する者ばかりだろうと思い込まされ、だから、一般人には関係がないと思わされてしまう。
法務省
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案をご覧あれ、ここにはQ&A、要項、法律案、理由、新旧対照条文が掲載されていますので、ほぼ総ての内容を見ることができます。なお、犯罪リストは次の
一覧参照。
最も懸念されるのは沖縄での基地反対闘争への適用。自動車道路に座り込んだりすれば「自動車道における自動車往来危険」罪の共謀罪。チラシを作るのにネット上から写真やイラストを流用したりすれば「著作権法」の共謀罪、基地前で集会を行ってダンプなどの進入を妨げれば、「組織的な威力業務妨害」罪の共謀罪、などといった調子でどれだけでも恣意的に拡大適用されることになります。共謀者はいずれも共謀正犯で一網打尽。基地を作ったり米軍の言うなりに基地を提供したい政府には誠に都合のいい法律でしょう。
改憲に反対するために、国会前で大規模集会を行うことについても、さまざまな口実でいくらでも犯罪を作りあげることができるようになります。何しろ実行に移す前の段階で二人以上で「心に描くだけ」で犯罪になるのですから。
これは政府に対しての抗議行動だけにとどまりません。対象法の範囲の広さをみれば、市民の誰もが対象になり得るというところが恐ろしいのです。
さて、下村博文自民党幹事長代行が、12日夜のBSフジ番組で来年の通常国会に自民党改憲案を出し改憲の発議を行うという見通しを示したと報道されましたね。もちろん安倍の指示です。共謀罪法案はそのためのものであることがますます明瞭になってきたと私には思えます。過去のさまざまな治安立法とこれを組み合わせれば、ほとんど平時の治安立法は完成。あとは改憲を行い「緊急事態条項」を活用して戦時立法を内閣の一存でつくってしまえば、思うとおりの戦争体制のできあがり。あれよあれよという間の出来事になるでしょう。”現在”が正念場であることは間違いない。